今更、ダ・ヴィンチ・コードの感想を書く。
本書は2003年に出版された世界的ベストセラー小説だ。
(日本語訳は2006年発売)
タイトルを聞いたことのない人のほうが少ないかもしれない。
それをあえて今、紹介する理由はSNSでトンデモ都市伝説(というか陰謀論)が跋扈する2023年、上質な都市伝説の需要が高まっている気がしているからだ。
この小説全てを都市伝説だというのはさすがに暴論だと思うが、都市伝説的要素はこの小説の根幹をなしている。そこに謎解き、サスペンス、魅力的なキャラクター達と複数の要素が絡み合い美しくほどけていく、素晴らしきエンターテイメント小説である。
※核心的なネタバレは避けますが、ストーリーには触れます。
書誌情報
書名:ダ・ヴィンチ・コード
作者名:ダン・ブラウン
出版:2006/3/10(日本語訳)
頁数:888(上・中・下合わせて)
あらすじ
ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ヴィンチの最も有名な素描〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した形で横たわっていた。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、警察より捜査協力を求められる。現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く……。
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この本のテーマ・描かれているもの
- メインテーマはキリスト教の聖杯伝説
- 史実に基づいたキリスト教と有名人にまつわる寓話の数々
- 正体を明かさない”導師”の暗躍や様々な組織の隠れた思惑が交錯するミステリー要素
- 主人公たちを聖杯に導く多くの謎解き
感想
結局都市伝説って面白い
聖杯。キリストの聖遺物のひとつである。キリストが最後の晩餐の時に使用したとされる杯だ。現代においては、バレンシア大聖堂に飾られている杯が聖杯だとする説や本物の聖杯は消失しているという説など様々な見解があり、全員納得の明確な場所は判明していない。
この小説は、この聖杯の在処、そしてさらに聖杯の持つ意味についてかなり都市伝説的、穿った見方をすればやや陰謀論的に描いた小説である。
ルーブル美術館の館長が秘密結社の構成員だったり、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵の中に聖杯に関するもモチーフが隠されていたり、フランスの有名な教会の一角に物を隠すための空間があったり、キリスト教の総本山バチカン市国が人類に隠している重要事実があったり…
その記述が、ことごとく本当っぽい。そして、欧州を舞台にした海外小説ではあるのだが、そういった都市伝説的な記述に出てくる作品や建造物は超有名なものが多いので、日本人でも十分にイメージができるのもこの本のいいところである。本当に上質な都市伝説をずっと聞いている気分で楽しめる。
「やりすぎ都市伝説」という特番がある。
かつて「やりすぎコージー」という様々な企画を行うバラエティ番組があったのだが、その中で出演者たちが自分の知っている都市伝説を語っていくコーナーが大人気となり、番組が終わった今でもそのコーナーだけ特番として残っているのである。
そう、多くの人は都市伝説が好きなのだ。だって自分の生きている世界に闇の政府とかいたらワクワクするもの。有名人の死が実は仕組まれたものだったらゾクゾクするもの。
昨今、SNSでとんでもない陰謀論が跋扈している。大した根拠もなく、ちょっと主張の理由を掘ればガタガタで、吹けば飛ぶような陰謀論たちだ(具体的にどういった陰謀論なのかを書くと陰謀の矛先を向けられそうなので書きません)。
そういうのに辟易している今こそ、この本を読んで「これぞ都市伝説(的小説)!」という感覚を味わってほしい。
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