「この漫画、めっちゃ面白かったなー!」と思って、ネットのレビュー読んでみたら、あんまり好評じゃなかった、みたいな経験ないだろうか。
私はある。不定期的にある。
その時に、「私って見る目無いんだろうか…」となる人と「いや、誰が何と言おうと、私はこの漫画好きだしな!」となる人がいると思う。
本書は、「あの女と付き合うとか、ないわー」と言われている女の子を好きになってしまい、「いや、周りがどうであれ、俺はあの子が好きなんだ!」となるものの、その女の子が変人であるためにめちゃめちゃに振り回され、しかし絶対に諦めない、健気な男の子のラブストーリーである。
書誌情報
書名:ケンガイ
著者:大瑛ユキオ
出版:2012/12~2014/8
巻数:全3巻
あらすじ
就活をドロップアウトして、レンタル屋さんでバイトを始めた主人公の伊賀くん(23)は、
1コ上の先輩・白川さんに一目惚れ。ぱっと見、悪くないルックスの彼女。
ところが、職場の先輩達からは「マニアックな映画にしか反応しない変わり者」という評判しか聞こえてこない。
さらに、彼女がいつもつるんでいる同僚と2人セットで「圏外」と呼ばれており、恋愛対象からは完全に除外されていて…!?白川さんにあれこれ接触してみたりオールナイトの映画を二人で観に行ったりしてみても
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進展があるのやらないのやら…という感じのもどかしい毎日。
おまけに職場の先輩達との雑談のネタにもできないビミョーな恋心を抱えて今日もバイトに向かう伊賀くん、、、
はたしてこの恋、アンテナの立つ日は来るのか…??
この本で描かれていること・見どころ
- 映画にしか興味のない女の子、白川さんに恋してしまった主人公、伊賀くんの苦難のラブストーリー
- 白川さんにどれだけ距離を作られても、諦めない伊賀くん
- バイト仲間が白川さんのことを馬鹿にするのに耐えられず、周囲に言い返したい伊賀くんと人間関係に口出しされたくない白川さん
- 伊賀くんの献身により本当に少しづつほどけていく白川さんの心
- 作中に登場する名作映画の数々(カルト含む)
感想
苦くて苦くて苦くてちょっとだけ甘い
伊賀くんの恋はとにかく前途多難。
意中の白川さんは映画以外本当に興味がなく、次の給料日までまともな食事が出来ないとしても、カルト映画のDVD-BOXを買ってしまうような女の子。他人にはまるで迎合せず、(一部の物好きや映画マニアを除いた)バイト仲間からの評価は、かなり低い。伊賀くんに対しても、物語の最初期は全く心を開いておらず、パーソナルスペースに入って来られるのがとにかく嫌で、自分に合わせた行動なんて絶対に取ってほしくない。
そんな難敵、白川さんを伊賀くんが好きになった理由、それは
「好きな映画のことを話しているときの笑顔が素敵だったから」
それだけ。本当にそれだけ。本当にそれだけのきっかけから超ハードモードの恋愛に挑んでいる。
最高でしょ?
人を好きになる理由なんてそんなものだったりする。というか、明確な理由があるだけまだ良いのかもしれない。理由も分からず、誰かに夢中になってしまうことも、人間はある。でも、好きなっちゃったらしょうがない。あとは自分の気持ちに正面から向き合うしかない。
伊賀くんの青いけれどひたむきな姿勢は、全ての片思い中の人間に勇気をくれる。報われてほしいと思うはずだ。
そして、かつて片思いをしたことがある人間には、淡いノスタルジィを与えてくれる。
自分の意見を貫き通すということ
インターネットの発達によって、ある物事・作品への他人からの評価というものがとても可視化しやすくなっている。
好きな作品や人が批判されているのは悲しいし、自分の好みや意見に自信が持てなくなるかもしれない。
何なら、「私はあんまり好きじゃないけれど、みんなが褒めているからいい作品なのかもしれない」と、自分の意見が曲がりそうになることもある。
そんな傾向のある人にこそ、この漫画を読んでほしい。
伊賀くんは、自分の好きな人が周りから「圏外」などと呼ばれているのに、全く気持ちが曲がらない。
何ならその周囲の態度への怒りから、白川さんへのアプローチ方法が大胆化したりする。
その大胆なアプローチが、功を奏したり、裏目に出たりするのだが、とにかく自分の意見は曲げず、白川さんと向き合おうとする。
伊賀くんを見ていると、自分の気持ちの大切さというものをとても感じる。
人の意見や評価はもちろん大切だ。自分が見落としていた側面や評価軸に気付かされることもあるし、人におすすめされて大切な作品に出合うこともある(このブログもそうありたいと願っている)。
しかし、物事に対峙するとき、やはり自分の好みや気持ちというのは最も重要なものの一つだ。
文章にすると、至極当たり前のことなのだが、愚直な伊賀くんを見ると改めてそう思わざるを得ない。
同時に、好きな人にどこまでもまっすぐなその姿勢に憧憬の念すら覚える。私は、自分の好きなものを本当に正面から愛せているのだろうか。そう自問したくなる。
と、いうことで、たとえ批判的な意見があろうと、私はこの『ケンガイ』という作品が好きなのである。
また、この作品に出合ってから、世間の評価は高いけど私の好みではない作品の紹介は控えようと心に決めている。
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